第47回 別所七山長者(1/2話)
むかし、むかし。般若の里に、「別所の長者さん」と呼ばれる大変裕福な長者さんがいました。長者さんが住む七山や穴田は、たびたび庄川の氾濫に悩まされていました。 長者さんには、美しい娘がいました。ある日、長者さんは、この娘の婿には、自分の跡継ぎにふさわしい立派な若者を迎えたいと、次のようなお触れを出しました。 「頼成の台地に水を引いて、荒れ地を切り拓き、田を作れる若者を娘の婿に迎える」 お触れの噂を聞いて、いろいろな所から沢山の若者がやって来ましたが、長者さんの意に叶う者は現れませんでした。 そんなある日、南の村から湖のように青い瞳の凛々しい若者がやって来ました。 「ここの台地に水を引けば、本当に私を婿にしてくれますか」 「よろしいとも。頼成の台地に水を引いて、田を作ることができたら、喜んで迎えよう」 長者さんは固く約束しました。すると若者は青い目をいっそう輝かせ、「きっとですな」 と重ねて念を押しました。こうして若者は、ただ一人、頼成の台地へ上っていきました。 さて、その夜のことです。 「ドドウ ドドドウ、ドドウ ドドドウ」 と、後の山を突き破るように鉄砲水が溢れ出して、頼成の台地に押し寄せてきました。−つづく−
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「頼成の荒れ地に田を作れる若者を娘の婿に迎える」
「頼成の荒れ地に田を作れる若者を娘の婿に迎える」
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