第47回 別所七山長者(2/2話)

村人たちはびっくりして、長者さんの所へ駆け込んできました。若者は、穴田の山に登って谷川を塞ぎ、後ろの山を抜いて穴田に水をあげようとしていました。これを見た長者さんは、 「みんな、よう聞け。一夜にして後の山をくり抜いて水を入れるなど、とうてい人間のできることではない。昼間の若者は、庄川に住むおろち(※)の仕業かもしれん。あの青い眼は、おろちのしるしじゃ。いくら頼成の台地に水を引いたとて、おろちを婿に迎えるわけにはいかん。さあ、水を防げ、防げ」と言いました。 村人たちは、力を合わせて土嚢を作りました。たいまつの火をかざして土嚢を運び、やっとのことで水をくい止めました。ところが、次の日の夜にもまた、別の山から鉄砲水が押し寄せてきました。 「負けるでないぞ。土嚢を運べ、土を盛れ、山を築け」 長者さんは村人たちに山を築かせ、夜が明ける頃、若者の流した水をどうにかくい止めることができました。それでも、若者は負けたとは言わず、南の山から西の山からと、次々に鉄砲水を流し込んできました。両者の戦いは七日七夜にわたって続けられ、八日目にさすがの若者も根負けしたのか、姿を消してしまったのでした。 般若の里の別所の七つの山は、こうしてできたそうです。庄川は氾濫しなくなり、頼成の荒れ地は豊かな平野に変わりました。七つの山を築いた別所の長者さんは、このことから「別所七山の長者どん」と呼ばれるようになり、その名は遠くの国々にも知られることになったそうです。 ―おしまい― ※おろち・・・大蛇
このお話は、『語りつぐ富山の民話』(稗田菫平編)より、一部加筆・修正の上、掲載しました。イラストは広田郁世さん作です。
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別の山から鉄砲水が押し寄せてきました。
別の山から鉄砲水が押し寄せてきました。
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