第49回 藤かけの渡し(2/2話)
弁天様は、大きな藤の木の下に立つと、藤え門を手招きしました。そして藤のつるを指して、 「川に、この藤のつるを架けたらいいがじゃな。そなたの力で雄神川を渡りやすくし、もっともっと多くの人々を無事にここへ渡れるようにしなさい。それがそなたのつとめじゃ」 と言って、神殿の奥へすうっと消えてしまわれました。 藤え門は言われた通りに、藤の大木からつるをはがそうとしました。すると、不思議なことに、つるを取っても取っても、後から後から生えてきて、藤づるの束は広い境内いっぱいになりました。 藤え門は村人の力を借りて、その藤づるで太い綱を作り、山の麓の大岩と藤え門の家の庭の大けやきの木と結びました。それ以来、藤え門は綱をたぐって波におし流されずに向こう岸へ渡れるようになりました。 こうして、藤え門の家の前と向かいの庄村との間に、舟の渡し場が作られたのです。渡し場は「藤のつるを架けた」ことから、「藤かけの渡し」とよばれるようになり、その後、この村は「藤掛け渡り村」と名付けられました。 昭和三年に今の舟戸ダムの少し下流に「藤かけ橋」という橋が架けられました。その後、藤かけ橋はダムの完成後に傷みが激しくなって取り外されました。 ―おしまい― ※1雄神川・・・現在の庄川 ※2さか巻く・・・川や潮の流れに逆らうように波が巻き上がる様子
このお話は、砺波市庄川町のボランティアグループが制作した紙芝居より、一部加筆・修正の上、掲載しました。
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「藤かけの渡し」とよばれるようになりました。
「藤かけの渡し」とよばれるようになりました。
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