第50回 烏堂とてんぐ(1/2話)

昔、野尻川の上流に、犬丸村という所がありました。村長は村の発展に貢献した立派な人でしたが病気で亡くなり、まだ幼い息子の烏丸が跡を取りました。烏丸は、幼い頃からこの家に仕えていた五助や村人たちに守られながら、村を治めていました。しかし、代官は以前から烏丸一族が気に入らず、何とか村から追い出し、土地を奪おうと企んでいました。 とても風の強い、ある日のこと。五助の家の人が捨てた灰の不始末から火が出て、烏丸の家をはじめ近辺の家屋まで焼ける大火事となってしまいました。五助の奥さんと息子の五与門は、「烏丸さまの火遊びから火が出たことにして、早く代官に届けた方が良い」と五助をせきたてました。五与門は、村の実権を手に入れようとしていたのです。五助は、自分の家から火が出たと言うことが怖く、奥さんや五与門の言いなりになってしまいました。 代官は、烏丸が無実を訴えても全く取り合わず、ここぞとばかりに村からの追放を言い渡しました。 信頼していた五助に裏切られた烏丸は、川向こうの親戚に相談しようと、船頭に舟を出すように頼みました。しかし、この船頭にも五与門の息がかかっており、舟は転覆し、烏丸は川に流されてしまいました。 こうして全ての財産は代官と五与門によって奪われてしまいました。
−つづく−
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船頭に舟を出すように頼みました。
船頭に舟を出すように頼みました。
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