第52回 五ヶの種もみ(2/2話)
了恵は、種もみの重い袋を肩に担いで村々を周りました。村人たちは、少しずつ持ち寄った米と五ヶ種を取り替えてもらい、春を待ちました。 五ヶ種から育った稲は不順な天候にも強く、よく育ちました。秋がきて、黄金色の稲穂は重く垂れ下がり、村人たちは、涙を流して喜びました。 「こんなうれしいことはない。了恵様と五ヶの種もみのおかげじゃ」 こうして、長い間不作に苦しんだ村人たちに、明るさが戻ってきました。そして、五ヶ種の噂は人から人へ、村から村へ、遠く加賀や能登、越前、越後の国々まで伝わりました。 明治の頃になると、五ヶ種を求めて遠くから「種かえさん」とよばれる人々が、五ヶ村を目指してやってくるようになりました。 五ヶ村に伝わる古い民謡「五ヶの稲だねちょんがれ」に、その名残をしのぶことができます。 「娘出てみよ 嫁ごも見やれ せどの小路へ 加賀の人 さっき八人 今また九人 種替さんが来るわいな うちの茶の間に 火をたきやれ」 ―おしまい―
このお話は、砺波市庄川町のボランティアグループが制作した紙芝居より、一部加筆・修正のうえ、掲載しました。
|
|
/DBIMG/COLUMN/densetsu_116_1.jpg
黄金色の稲穂が垂れ下がり、村人たちは大喜びしました。
黄金色の稲穂が垂れ下がり、村人たちは大喜びしました。
|