第53回 お上様塚と観音様(2/2話)
こうして、お上様塚の松を切り倒すことになりました。ところが、それからしばらく後、お上様塚の近くに住む老婆が、突然重い病にかかり、死んでしまいました。 「あの婆さん、松の木っぱをこっそり持ち帰って、かまどのたきつけに燃やいたがいと。ばちが当たったがいと」 この噂はたちまち村中に広がりました。西野々の村人たちは、お上様塚の近くに集まり、話し合いました。 「お上様の祟り、なよんするにゃどうしたらよかろうかのう」 「この在所にゃ、石屋さんが多いもん、お上様塚に観音様を建てたらどうじゃな」 「そんなら、しょうずん田の栄次郎さんに頼んでみるか」 村人たちは、供養のために、腕がいいと評判の栄次郎に観音様を彫ってもらうことにしました。やがて、大きな金屋石から掘り出した観音様が完成し、お上様塚の隣の御堂に納められました。村人は、いっそうお上様を慕い、毎日お参りするようになりました。 ある日、近所の信心深いおじいちゃんが病気になり、高い熱が何日も続きました。家の人たちはおじいちゃんに元気になってもらおうと、毎日朝夕、観音様にお参りしました。そして七日目の朝早くお参りに行くと、観音様は汗でびっしょりになっていました。家へ帰ると、夕べまで高い熱が続いていたおじいちゃんの熱はすっかり下がり、元気を取り戻していました。 それからは、観音様にお参りする人がさらに増え、お花を供える人が絶えないようになりました。 栄次郎は六十五才で亡くなるまで、石の観音様を千体も彫ったそうです。 ―おしまい―
このお話は、砺波市庄川町のボランティアグループが制作した紙芝居より、一部加筆・修正のうえ、掲載しました。
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観音様は汗でびっしょりになっていました
観音様は汗でびっしょりになっていました
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