第54回 おさよ(1/2話)
むかし、五箇山が加賀藩の領地だった頃、庄川の東岸の小原村は罪を犯した人を流す流刑の地でした。 五箇山に遅い春が訪れたある日、おさよというたいへん美しい娘が小原村へ流されてきました。 おさよは、能登輪島の西にある暮坂村の生まれで、家が貧しかったので人買いの甘い口車にのせられ、金沢のいずみ屋へ身売りをさせられてしまいました。このいずみ屋はなかなかのならず者で、おさよ達を芸者として休む暇もなく働かせていました。 しかしある日、いずみ屋と一緒になって悪事を働いた武士がおとがめを受ける事件が起き、おさよたちもその武士の風紀を乱したという罪で、奥能登へ流されてしまいました。ところがおさよの流された奥能登は生まれた村と近かったので、これでは流刑にならないと、改めて小原村へ流されてきたのです。 おさよは、凶悪な罪人ではなかったので、土地の庄屋に預けられ、外へ出るのも自由でした。きれいで、しかも芸達者なおさよは、たちまち村人の人気者になりました。折に触れ、おさよは持ち前の芸を活かし、村人たちに唄や踊りをたくさん教えました。 −つづく−
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五箇山・小原村に流されてきました
五箇山・小原村に流されてきました
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