第6回 天狗と与左衛門(後篇)
また、炭をかずく競争では、たいていのもんは十五俵かついで三間ほどしか歩けんだが、与左衛門ときたら三十俵もかついで二町も歩いたということや。 「おらみたい強いもんは、どこにもおらん(※10)。」といばりくさっとった。 ところがじゃ、ある時、宮さんの前を通ろうとしたら、天狗の様な大男が立ちはだかった。「だるじゃい(※11)お前は、おら通れんがい。」大男はからから笑うて「こりゃ与左衛門、お前は天狗にも負けんとほらふいて歩いとるとゆうがなら、おらと相撲とってここを通らっしゃい。」というた。 そんで道具を道ばたにさらいおいて(※12)二人で相撲取ったがいと。与左衛門がどっだけ力入れてもどうにもならんだがいと。 その場に倒れてしもうて、ふさがった(※13)がいと。そのうち寒むなって気ついたらどこにも大男おらんだと。 与左衛門はやっとの思いで家について、まま(※14)も食べんと寝てしもた。家のもんが心配して「どうしたがや。」と聞いたがやと。 与左衛門は、やっと大男の話したがいと。話を聞いた家のもんは、村の衆が宮さんに行って見たがやと。 しめ縄の張ってあるでっかい杉の木の下が、与左衛門の足跡でくちゃくちゃになっとったと。「こりゃ与左衛門、大杉と相撲取ったがや。天狗さんが大男にばけてこらしめたんじゃ。」 こんなことがあってから、村の衆は自慢するとひどいめにあうから、気つけんまいけと、いましめあったと。
−おしまい−
※10 おらん・・・・いない ※11 だるじゃい・・誰ですか ※12 さらいおろす・持ち物をむぞうさにおろす ※13 ふさがる・・・気を失うこと ※14 まま・・・・・ごはん
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紙芝居『天狗と与左衛門』 作・ひまわりグループ
紙芝居『天狗と与左衛門』 作・ひまわりグループ
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