第57回 まつがいけの三十三観音(2/2話)
そんなある日、観音様の評判を聞いた欲張りなおばあさんが、暗がりにまぎれて観音様を盗もうと考えました。 「三十三人もいらっさるもん。一人ぐらいお連れしてもわからんじゃろ」 息子と二人、一体の観音様を担ぎ、大きな用水の橋を渡ろうとした時です。二人は観音様もろとも川へ落ちてしまいました。息子は川ぶちにつながり助かりましたが、おばあさんと観音様は、それっきり姿が見えなくなってしまいました。 その後、一人助かった息子は毎晩夢を見てうなされました。三十二人の観音様が、毎晩集まってきて、 「一人足らん。一人どこへ行った?」 と探しているのです。困った息子は、西の村の石屋に一体の観音様を彫ってもらい、盗んだ観音様が置いてあった場所に置こうとしました。ここで息子は自分の失敗に気がつきます。一町(約百メートル)ばかり離れたとなりの観音様に番号が入っているのに、自分がたてた観音様には番号がありません。盗んだ観音様は、八番だったのですが、今さらどうすることもできず、しょぼしょぼと家に帰りました。 長い年月の間に、観音様は雨風で少しずつとけて、中には顔かたちがよくわからないものもあります。 しかし庄川の堤防にならんだ観音様は、やさしいお顔で庄川の流れと町の人々を見守ってくれているのです。 ―おしまい―
※このお話は、砺波市庄川町のボランティアグループが制作した紙芝居より、一部加筆・修正の上、掲載しました。
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「一人たらん、一人どこへ行った」
「一人たらん、一人どこへ行った」
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