第58回 川ごえの蓮如様(1/2話)
むかしむかし、蓮如上人というえらいお坊さんがおられました。上人は、あちこちの村に仏の教えを伝えながら旅をしておられました。 ある時、才川の宗善寺というお寺にやってこられた上人は、そこに自分の姿を絵に描いて残しておこうと思われ、池の水に自分の姿を写して描かれました。 村のみんなは、その絵を掛軸にして、朝夕一心に拝みました。 あちこちに広まった上人の話は、やがて高岡城の殿様の耳にも入りました。 殿様は、自分の城がいっそう栄えるように、守り神としてその掛軸が欲しくなり、お寺へお願いに来られました。 寺や村の人たちは、仕方なく殿様に掛軸を渡すことにしました。掛軸をもらった殿様はたいそう喜び、家来と一緒に毎日お参りしていました。 ある夜、眠っている殿様の夢に上人が現われ、こう告げられました。 「私はこの立派な高岡の城に連れられて来たが、村のことが気がかりじゃ。早く才川の寺に帰りたい」 また同じ頃、宗善寺のお坊さんの夢の中にも上人が現われました。 「私は高岡の城にいるが、才川の村や寺のことが気掛かりじゃ。早く迎えに来てほしい」 お坊さんは、 「夢のお告げじゃ。蓮如上人が待っておられる。早く、迎えに行こう」 と早速弟子と一緒に、高岡城へ掛軸をいただきに行きました。わけを話すと、殿様も同じ夢を見たと驚かれ、お坊さんに掛軸を渡されました。 −つづく−
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「寺に帰りたい。迎えに来てほしい」
「寺に帰りたい。迎えに来てほしい」
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