第59回 赤尾の道宗さん(1/2話)
元日の朝、瑞泉寺へお参りに行くと、太鼓の音と鐘楼からの梵鐘の音が一緒に聞こえてきます。これは、「梵鐘と太鼓の同時打ち」といい、全国に類を見ない瑞泉寺特有の行事です。 今から五百年ほど前、西赤尾で、自分の家を念仏道場にし、蓮如上人を師と仰ぐ道宗というお坊さんがいました。 道宗は上平村に生まれ、父は平家の落人・角淵刑部左衛門といいました。幼名を弥七といい、四才で母を、十三才で父を亡くし、伯父の浄徳というお坊さんに育てられました。 十八才になった弥七は両親に会いたくなり、九州の筑紫(今の福岡県)の「羅漢詣で」のために五箇山を出ました。越前で信州更科の僧侶に会い、九州へ行くより京都の本願寺に行くよう諭されました。本願寺では、ちょうど「報恩講」が行われており、弥七は三日三晩、寝食を忘れ、蓮如上人の説教に聞き入りました。それに気付かれた上人は、弥七と対面問答をし、師弟の縁を結びました。 三八才の時に「道宗」という名前と阿弥陀仏をいただいて西赤尾に帰って道場を開き、村人に上人の教えを広く伝えました。道宗が四十八本の割木の上に寝て、いつも仏様の御恩を忘れないように、身体中アザだらけになって寝た話は有名ですが、ほかにも数多くの言い伝えがあります。道宗は上人が訪れた時、必ず瑞泉寺にお参りしたといいます。 ある年の元旦、蓮如上人が瑞泉寺に滞在中の時のこと。尋ねたいことが沢山あった道宗は、どうしても元旦のお勤めにお参りせずにはいられませんでした。 「こんなひどい吹雪に出ていっては危のうございます」 妻の言葉も聞かずに、道宗は舞い狂う吹雪の暗闇の中を出掛けていきました。 −つづく−
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「こんなにひどい吹雪に出ていっては・・・」
「こんなにひどい吹雪に出ていっては・・・」
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