第62回 南蟹谷のおこり(2/2話)
化け物は体をくねらせ、水はザブザブ音を立てています。お坊さんはなかなか分かりませんでしたが、パッと答えがひらめきました。 「それは蟹だ。おまえは蟹の化け物だろう」 「よくぞわかったな」 池の水はますます激しく波打ちました。 「これまで多くの人を隠したのはなぜだ。その罪は許されないぞ。仏様のさばきを受けろ」 とお坊さんが言うと、蟹は、 「私は埴生八幡宮の神様である。村の人々が神様にお参りしないのが悲しいのだ。私を拝んでくれるなら人を隠したりしない」 「よしわかった。そのことを村の人たちに知らせよう」 南無阿弥陀仏と一生懸命お経を唱えると風が吹き起こり、池は渦巻きになり、蟹は一声「ウォー」と叫んだかと思うと、池の中へ消えて行きました。お坊さんは村に戻り、村人にこのことを話しました。 その次の日の朝、大きな大きな蟹が川の橋の上に覆いかぶさって倒れていました。村人はお宮さんを作り、蟹をお祀りしました。 その後、この地方を蟹田(谷)と呼び、それがいくつかに分れて、東蟹谷、北蟹谷、南蟹谷なのです。 ―おしまい―
このお話は、福光地域公立保育園の保育士が制作した紙芝居より、一部加筆・修正の上、掲載しました。
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「私を拝んでくれたなら、人を隠したりしない」
「私を拝んでくれたなら、人を隠したりしない」
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