第64回 狐にだまされた佐平さん(2/2話)
「しまった。酒が飲めると思って、とんでもない約束をしてしまった。家には妻や子どももいるのに…。さてさて困ったことになったぞ」 佐平は家に帰って、妻と子どもたちの顔を見ながら娘との約束を思い出し、気になって仕方ありませんでした。そして近くの物知りの老人に相談に行きました。 「それはきっと狐の仕業じゃ。おまえの話のような娘がいるとは聞いたこともないわい。狐に化かされているんじゃろう。行くな、行くな」 と老人はきつく言い聞かせました。 とうとう約束の日になりました。佐平は仕方なくこっそり家をぬけ出すと、お酒とお饅頭を買い、それを持って縄蔵の地蔵堂へと向かいました。遅れまいと急いで行くと、娘はすでに来ていました。 「用事ができ、遅くなってすまなかった。これは、約束の酒と饅頭です」 佐平から包を受け取ると、突然娘は本当の姿をあらわしました。 「ホホホホ。私が欲しかったのは、このお酒とお饅頭だけよ。私はこのあたりに住む白狐さ」 狐は酒と饅頭を持つと、さっと姿を消してしまいました。 「村の老人が言っていた通り、やはり狐だったのか。私はだまされてしまった。もとはと言えば、酒が飲みたい一心に嘘をついた私がばかだった」 と柳の下でいつまでもぼんやりしながら座っていました。 ―おしまい―
このお話は、福光地域公立保育園の保育士が制作した紙芝居より、一部加筆・修正の上、掲載しました。
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「私はこのあたりに住む白狐さ」
「私はこのあたりに住む白狐さ」
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