第65回 女郎滝(2/2話)
「有難うございました。ここへお連れくださったお礼に、今から私がこの滝を昇る様子をお見せしましょう」 親子はびっくりして止めようとしましたが、女は滝壺に飛び込みました。 しばらくして滝に目をやると、絶壁を一匹の蛇が木をよじ登るような格好で、あっという間に滝を昇りきりました。そして滝の上に立ち、こちらを見てにこりと微笑んで雲の中に消えました。残された親子は、あまりに突然のことだったので、気が動転して足がすくんでしまいました。 村に帰り、長老にその話をすると、 「それは、きっと、その滝に住む大蛇が化けて女の姿になって現れたものじゃ」 と言いました。村人たちはその話を聞き、畏れおののきました。 その後、その美しい女を二度と見た人はいませんでした。しかし朝もやが晴れ、朝日が輝く頃、滝の方から透き通ったような音色が聞こえ、美しく虹がかかるのを見たという人はたくさんいました。 それからというもの、誰からともなく、この滝を「女郎滝」と呼ぶようになりました。
―おしまい―
※このお話は、小矢部市郷土愛護セミナー「ひまわりグループ」が手掛けた『ふるさとの民話〜小矢部〜』より、一部加筆・修正のうえ、掲載しました。
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「この滝を昇る様子をお見せしましょう」
「この滝を昇る様子をお見せしましょう」
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