第66回 隠尾の火祭り(2/2話)
与五兵衛が深々と頭を下げ、顔を挙げてみると、今、ここにおいでになったご院主さまの姿が忽然と消えていました。しばらくの間、茫然とした与五兵衛は、あることに思い当りました。 「もしかしたら、隠尾のお宮様の神様が、ご院主さまの姿を借らはって母屋が火事にならんように消してくだされたんだわ。なんちゅうありがたいこっちゃ。もったいないこっちゃ。」 与五兵衛は、板切れを持って母屋へ行き、朝早くに起きた不思議なできごとを話しました。板きれを受け取って読んだ母屋の人たちは、この大雪の中、火事を出さなかったことを喜び、神様のありがたい思し召しに感謝しました。それから村の人たちも集まり、みんな羽織り袴に着替えて、お神酒を持ってお宮様にお詣りしました。そしてこれからも神様を大事にしようと、この日十二月十八日に火祭りをすることに決めました。 火祭りの日は、南部の母屋のおやっさまは、洗い米をひいた粉でだんごを作り、まゆ玉にして木の枝に飾ります。それから、神様にあげる御前を作り、尻尾のある魚をのせて神様にお供えし、火事を防いでくれた神様への感謝の気持ちを表しました。
―おしまい―
※このお話は、砺波市庄川町のボランティアグループが制作した紙芝居より、一部加筆・修正のうえ、掲載しました。
|
|
/DBIMG/COLUMN/densetsu_144_1.jpg
母屋の人たちは神様の思し召しに感謝しました。
母屋の人たちは神様の思し召しに感謝しました。
|