第67回 きつねの嫁入り(1/2話)
薮波と東蟹谷地区の境を流れる渋江川に、砂馳川が流れ込んでいる所があります。 昔、このあたりの土手には、ススキやくずがたくさん生えていました。天気の良い日には、時々山から川の土手づたいに狸や狐が下りてきて遊んでいました。 そんなある秋の日のこと、村人が野良仕事の手を休めてあたりの景色を眺めました。ふと川の上手を見上げると、二人連れの女の人が足早に歩いていました。 一人は背中に大きな荷物を担ぎ、両手に風呂敷包みをぶら下げた年老いた女の人でした。 もう一人は小さな包みを大事そうに抱きかかえ、うつむき加減に歩いている娘でした。 村人は、「このあたりでは見かけぬ顔じゃが、どこへ行くがやろ」と思い、しばらく眺めていると、二人は橋のたもとで立ち止まりました。 すると急に空が曇り、黒い雲が二人を包み込みました。年老いた女の人は娘を先にして急いで橋を渡っていきました。 その途端、辺りは真っ暗になり、大粒の雨が降ってきました。村人は慌てて近くの小屋に駆け込みました。
−つづく−
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「このあたりでは見かけぬ顔じゃが…」
「このあたりでは見かけぬ顔じゃが…」
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