第8回 地蔵様を助けた男(前篇)
昔々、今から四百年ほど前のことであろうか、この藪波(やぶなみ)の地に、とても信心深く働き者の男が住んでいました。 今日も一日一生懸命働いて家へ帰る途中のことでした。ちょうど、高木(たかき)の中央を流れている四谷川(したんがわ)の橋のたもとまで来た時、川の中から声が聞こえてきました。耳を澄ましてみると「おー寒い、寒い。このままでは凍え死んでしまいそうだ。早く助けて下さらんか」と、叫んでいるではありませんか。よく見ると川底に何か光っているものが見えます。それでもっとよく見ようと橋の上から覗き込むと、何と大きな地蔵様が沈んでおられるではありませんか。 「おー、何としたことだ。早く助け出してあげねば」と思いました。でも、川の水かさは深く、しかもお地蔵様は重そうです。男は「そんなことは、どうでもよい。早く助けなければ」と川の中へ飛び込みました。 川の深さは男の股の近くまでありました。男は腰をかがめ、両手でお地蔵様を持ち上げようとしましたが、重くて簡単に持ち上げられません。 やっとのことで、この重い地蔵様の頭を水面近くまで引き上げました。すると、あんなに重かったお地蔵様が急に軽くなりました。それで男は、らくらくとお地蔵様を抱え、高い土手まで持って上がることができました。
−つづく−
|
|
/DBIMG/COLUMN/densetsu_15_1.jpg
イラスト 作・ひまわりグループ
イラスト 作・ひまわりグループ
|