第70回 てんぐのこしかけ木(1/2話)
むかし、金屋の小川原に長ぞうという木こりがいました。長ぞうは父の長べえに似て、木を切るのが大変得意でした。 ある日、長べえは長ぞうに山仕事の守りごとを言い聞かせました。
@山小屋で寝る時は、枕元にお守りの掛け木をかけ、朝晩には一日の無事をお祈りする。 A炊いたばかりの初ご飯を鍋の蓋にのせて、みんなが食べ終わるまで棚の上に供え、山の神に安全をお祈りする。 B毎月十五日は山の仕事を休んで、五平餅かぼた餅を供える。 C山へ入る時は、山の霧を晴らすために梅干しを食べる。 D朝ごはんに汁をかける「ぶっかけめし」は食べてはならない。
しばらくして、長べえはもう一つ大事なことがあると語りました。 「天狗さんのねまり木をやたら切ったら、たたりがあるという。もしどうしても切らんならんええ木なら、お神酒をあげてお祓いせにゃあかんぞ。木口のそげは夜さる天狗さんがお通りになる時につまづいたり、顔を突いたりすりゃあかんから、ええがに切りとるのじゃよ」 ある年の四月の終わり頃、奥山の雪どけを待って、長べえは長ぞうや仲間を連れて金屋を出ました。しかし長べえは村を出ないうちに具合が悪くなり、仕方なく家へ帰りました。長ぞうは父の代わりに小頭となって、越中と飛騨の国境に近い桂村の山奥に入りました。 −つづく−
|
|
/DBIMG/COLUMN/densetsu_151_1.jpg
「山仕事にゃ、守らんにゃあかんことがいっぱいあってな」
「山仕事にゃ、守らんにゃあかんことがいっぱいあってな」
|