第73回 巴塚と一本松(1/2話)
天神町の道路の横に、一本の古い松があります。緑の傘を広げたようなこの松がある場所を巴塚といいます。なぜ巴塚とよばれるようになったのか、お話します。 今から七百年ほど前、信濃(現在の長野県)の木曽に巴というかわいい女の子がいました。ある日、父親を亡くした義仲という親戚の子どもを巴の家で預かることになりました。元々男勝りな性格の巴と義仲は、一緒に馬に乗ったり、弓矢で鳥を捕らえたりして毎日を楽しく過ごしました。やがて二人はめでたく結婚し、巴は巴御前と呼ばれるようになりました。巴御前は、合戦でいつも夫と闘い、手柄を立てました。 一一八三年、平家軍が義仲の軍を破って越中へやってきました。 「さすがに平家の軍は強い。まともに戦ったら負けてしまいます。何かよい考えはないでしょうか」 「よし、平家を山奥へ誘い出そう。夜になったら、大勢の侍がいるように見せかけるために、牛の角に松明をつけ、一気に平家を倶利伽羅谷の底へ攻めおとすのだ」 平家軍は、義仲の作戦に見事に引っ掛かり、次々と谷底に突き落とされていきました。 身重でこの戦に同行していた巴御前は、激しい戦いの中で赤ちゃんが生まれそうになり、福光の石黒光弘の家で赤ちゃんを産みました。その後も戦は一向に収まらず、戦に戻らねばならない巴御前は赤ちゃんにお乳がやれなくなり、赤ちゃんは死んでしまいました。巴御前は泣きながら土を掘って埋め、その上に黒い石を置き、横に小さな松の木を植えました。 −つづく−
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「お腹が痛い…。どうしましょう」
「お腹が痛い…。どうしましょう」
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