第8回 地蔵様を助けた男(後篇)
ところが、どうしたことか急にお地蔵様が重くなり、それ以上動かすことができなくなりました。その時、「村の人、ありがとう。本当に助かりました。ここで結構ですから、どうぞ早くお家へお帰りください」と、地蔵様がしゃべりました。男は、びっくりして着物に手をやると、びしょ濡れだった着物が嘘のように乾いているではありませんか。しかし、お地蔵様は何もなかったかのように土手の上にじっと座ったままでおられました。 「このお地蔵様は、ただのお地蔵様ではないぞ。もったいない、もったいない」と、言いながら手を合わせ深く頭を下げ家へと急ぎました。 家に帰った男は家族にこの不思議な話をしました。 その後、この話は村中に広がり、話を聞いていた村人たちは「この川の上流は信心(※1)深い人が多く、そこに祀られてあったお地蔵様が流れてきたのではないか」と言うことで、早速、立派なお堂を造り丁寧にお祀りしました。 これが、高木の一体地蔵様で「四谷川地蔵様」とも言われています。今も六体地蔵様の隣に鎮座(※3)され、村人たちを暖かく見守っておられます。
−おしまい−
※1信心・・・仏様の教えを信ずる人 ※2祀る・・・神仏としてあがめ、一定の場所に安置する ※3鎮座・・・神仏がその場所を自分の土地として、長くとどまる
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イラスト 作・ひまわりグループ
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