第74回 弘法さまにもろた水(2/2話)
次の年、ひどい日照りが続き、谷の水が涸れるかもしれないと思ったおばあさんは、背戸の谷へ行ってみました。すると、お坊様が杖で筋をつけていかれたところから、ぼこぼこと湧くように水が流れていました。以来、どんな日照りになっても、水が涸れることはなかったそうです。 お坊様が目を切っていかれた石臼は、新しい鑿の跡のおかげで、いつでも豆や稗のよい粉を挽くことができました。 お坊様はおばあさんの家へ来る前に下の衆の家へ行きましたが、そこでは家の中へ入れず、水もあげなかったそうです。それからというもの、夏の日照りになるとその家へは水が一滴も来なくなり、本当に困ったということです。 あの粗末な格好をしたお坊様は、実は弘法大師という偉い方でした。 おばあさんは、「あんな味ない稗団子を文句も言わずにあがらっしゃった。おっちゃの飲み水は弘法さまにもろた有難い水ながいぞ」と手を合わせて感謝しました。 そして、石臼を柿渋を塗った紙にくるんで蔵へ入れ、家宝として大切にしました。 今でも、二ツ屋には冷たい水がとうとうと流れ出て、大滝といわれています。 ―おしまい―
このお話は、砺波市庄川町のボランティアグループが制作した紙芝居より、一部加筆・修正のうえ、掲載しました。
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「弘法さまにもろたありがたい水ながいぞ」
「弘法さまにもろたありがたい水ながいぞ」
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