第77回 きんのわさび(1/2話)
むかし、福光の西の空にそびえる医王山という山から、金のわさびが採れたというお話です。 福光から山をいくつも越えていった金沢の大きなお城に、加賀の前田のお殿様がおられました。その家来の小塚様は、ある時お殿様から命じられた仕事で、医王山の麓にある広瀬舘の祖谷という村に泊まりました。 「ちょっと暇ができたなあ。今日は天気もよいし、医王山に登ることにしよう」 小塚様は、家来を連れて医王山に登っていきました。朝出発した時はとても天気が良かったのですが、お昼から霧が出て、だんだん前が見えなくなってきました。 「これでは頂上まで登れない。諦(あきら)めて山を下りることにしよう」 しかし、あまりに霧が深いので、小塚様たちは道に迷ってしまい、仕方なく山の中を流れている小さな川に沿って下りることにしました。するとどこからともなく良い香りがしてきました。 「おやおや、いいにおいがします」 「一体、何だろう」 においのする所を探して下りていくと、川の流れの中に良い香りのするわさびが生えていました。 「こりゃー、すごいぞ」 「こんなにわさびがありますよ」 「殿様に差し上げたら、さぞかし喜ばれるだろう」 −つづく−
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「こんなにわさびがありますよ」
「こんなにわさびがありますよ」
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