第78回 牛嶽の仙人と悪僧(1/2話)
立山や白山は昔から霊山として尊ばれ、山伏修行僧が多く登山するようになりました。砺波地方では南にそびえる牛嶽が霊山として敬われ、牛嶽信仰が生まれました。 今からおよそ千年前、唐(今の中国)から日本に渡ってきた円徳上人という立派な僧がいました。上人が越の国にやってきたとき、はるか南の方に赤や紫など五色に輝く雲に包まれた神々しい山・牛嶽を見つけました。 上人が、その美しい峰に心惹かれて足を早めると、不思議なことに雲間から仏様が現れました。そのお姿に導かれて牛嶽の麓までやってきました。 「この山でもっと修業を積み、山を開き、仏法を盛んにするのじゃ」 仏様はこう言い、五色の雲の中に消えてしまいました。 上人は庄川にとどまって牛嶽を開き、湯谷の一番奥にある大窪の聖地に入りました。そして大窪の滝に打たれて身を清め、来る日も来る日も修業を続けました。やがて上人の噂が広がり、上人の徳を慕って日本中から千人もの僧が集まりました。そして牛嶽を修業の場として教えを乞いました。 これまで住む人も稀だった牛嶽付近の谷間には寺が立ち並び、多くの修業僧で賑わうようになりました。 その中に心掛けの良くない、八天坊という僧がいました。八天坊は奥山に入った寂しさからある日、こっそり東の峠を越えて山里に下りました。そして「女の人は山に入ってはならない」という掟を破り、二人の評判の悪い女を連れて帰って山小屋に隠し、毎晩こっそりと会いに行きました。 −つづく−
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二人の評判の悪い女をこっそり連れて帰りました。
二人の評判の悪い女をこっそり連れて帰りました。
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