第78回 牛嶽の仙人と悪僧(2/2話)
しかし牛嶽の主、牛嶽権現はそれを許しませんでした。突然大きな音が轟き、大地が裂けて山は崩れ、岩や石が谷を埋めて、一瞬のうちに多くの寺が傾いてしまいました。 「困ったことをしてくれた。ナムサン牛嶽大権現!許したまえ」 上人はこう叫んで、ごうごうと渦巻く大窪の滝へ身を投じました。掟を破った八天坊は崩れた大きな岩に押し潰され、谷間に埋まり死んでしまいました。命からがら逃げ出した僧たちは二度と牛嶽には戻らず、寺々は見る影もなく荒れ果ててしまいました。 二人の女は、こっそりと元来た道を逃げ出し、東の峠に辿り着きましたが、牛嶽権現が許すはずはなく、たちまち二本の杉に姿を変えられてしまいました。 一方、滝に身を投げ、弟子の罪の許しを祈った円徳上人は仏のお慈悲によって命を救われました。そして前よりもいっそう修業に励み、その後は頼成山へ移って千光寺を開きました。 命がけで修業に励む上人の姿は多くの人々の心を打ち、その名は遠く朝廷にまで伝わりました。そしてその功績を讃えて、仏像一千体を賜りました。 今、牛嶽に昔の面影は全くありません。ただ残っている地名だけが、わずかに昔の名残をとどめています。二人の女が命果てた峠には大きく成長した「二本杉」がそびえたち、庄川の町からも黒々とその姿を見ることができます。 ―おしまい―
このお話は、砺波市庄川地域ボランティアグループが制作した紙芝居より、一部加筆・修正の上、掲載しました。
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円徳上人は命を救われ、千光寺を開きました。
円徳上人は命を救われ、千光寺を開きました。
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