第79回 地蔵様を助けた男(1/2話)

今から四百年ほど前のことであろうか、藪波にとても信心深く、働き者の男が住んでいました。 今日も一日、一生懸命働いて家へ帰る途中のことでした。ちょうど高木の中央を流れている四谷川の橋のたもとまで来た時、川の中から声が聞こえてきました。 耳を澄ましてみると、 「おー寒い、寒い。このままでは凍え死んでしまいそうだ。早く助けてくださらんか」 と叫ぶ声が聞こえてきました。よく見ると、川底に何か光っているものがあります。もっとよく見ようと橋の上から覗き込むと、なんと大きなお地蔵様が沈んでおられるではありませんか。 「おー、何としたことだ。早く助け出してあげねば」 でも川の水かさは深く、しかもお地蔵様は重そうです。男は少し迷いましたが、 「そんなことはどうでもよい。早く助けなければ」 と川の中へ飛び込みました。川の深さは男の股の近くまでありました。男は腰をかがめ、両手でお地蔵様を持ち上げようとしましたが、とても重くて簡単には持ち上げられません。 男は力をふりしぼり、やっとのことで、この重いお地蔵様の顔を水面近くまで引き上げました。すると、あんなに重かったお地蔵様が急に軽くなりました。男は楽々とお地蔵様を抱え、高い土手まで持って上がることができました。 ところがどうしたことか、お地蔵様が急にまた重くなり、それ以上動かすことができなくなりました。 −つづく−
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「早く助けなければ」
「早く助けなければ」
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