第80回 医王山の狐(1/2話)
むかし、医王山の三千坊に、山へ来る人を化かしては喜んでいる狐がいました。 ある日、麓村の一助が木を切りに森へ出掛けました。ふと見ると、きれいな娘がいるではありませんか。一助はうれしくなってその娘に近づき、「何してるんだ?」と声を掛けました。 「お腹が減ったので、ひと休みして団子を食べようと思っているのです。ひとつあげましょうか」 ちょうどお腹がすいていた一助は、団子を三つも食べてしまいました。 「喉も渇いたでしょう。おいしいお茶もどうぞ」 一助は娘が差し出した竹の筒を受け取り、全部飲みました。そして、お腹がいっぱいになった一助は、いびきをかいて眠ってしまいました。 しばらくして一助が目を覚ますと、娘の姿が見えません。さっき食べた団子のお皿(竹の皮)には、馬の糞を丸めたものが三つ並び、その横に馬の小便が入った竹の筒がありました。 「わっ、こんなものを食べたのか。なんということじゃ。さてはさっきの娘は狐だったのか」 次の日、一助は狐を捕まえて懲らしめようと、油揚と綱を持って山へ行きました。すると、向こうからきれいな娘がやってきました。 「昨日はおいしいお団子をありがとう。お礼にこの油揚をあげよう」 「油揚なんていりません。それよりも、このおいしい饅頭を食べませんか」 重箱に美味しそうな饅頭がぎっしり詰まっているのを見た一助は、狐のことも忘れ、七つも食べてしまいました。そしてお腹がいっぱいになり、またもや眠ってしまいました。 −つづく−
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「うーん、こりゃなかなかうまい団子じゃ」
「うーん、こりゃなかなかうまい団子じゃ」
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