第80回 医王山の狐(2/2話)
やがて目が覚めると、重箱と思っていたのは便所のふたで、その中に馬の糞が入っていました。おまけに、持っていった油揚と綱はどこを探してもありません。また狐にだまされてしまったのです。 一助が二度もだまされたことを聞いた村の豪傑の五衛門は、次の日、狐を退治しようと山へ入って行きました。すると、向こうからあまり美しいとは思えない娘が柴を担いでやってきました。 「おーい娘、お前は狐だろう。さては、化かす方法を変えたのか」 狐は美人に化けると聞いていた五衛門は、娘が狐か本当の人間か迷いました。五衛門は、確かめようと力いっぱい娘を抱きしめました。娘は顔を赤らめてとても喜びました。その日は何事もなく、五衛門は山を下りて家に帰りました。 それから四、五日経ったある日、娘が両親と一緒に五衛門の家にやってきました。 「娘はあなたのことが忘れられません。美人ではありませんが、とても働き者です。どうか嫁にもらってください」 五衛門は困りましたが、何度も何度も頼まれ、断り切れずに渋々その娘と結婚しました。 悪い狐のうわさは村じゅうに広まり、困った村人たちは、お寺へ相談に行きました。和尚さんは、 「お彼岸の日に作る涅槃団子には、阿弥陀如来様の滴が入っていて、いざというとき魔除けになる。山に行く時、身体につけて歩いていると、狐にだまされないじゃろう」 それから、村の人たちが山へ行く時は、必ず涅槃団子を一個持って行くようになりました。狐に化かされたり、まむしにかまれることがなくなり、村人たちは幸せに暮らしたということです。 ―おしまい―
このお話は、福光地域公立保育園が制作した紙芝居より、一部加筆・修正の上、掲載しました。
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「おーい、娘。お前は狐だろう」
「おーい、娘。お前は狐だろう」
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