第81回 サイカチ原のクモ(2/2話)
秋の陽もだんだん暮れ、まさに陽が西山に沈もうとしたところ、どこから来たのか金色の縞模様に輝く一匹のクモが現れました。そして人々の足元を通ったかと思うと、その茨の薮をくぐらずに、薮の下の石の間をくぐり抜けて、するすると中へ入ってしまいました。 それを見た人々はクモのまねをして、茨の下の石を一つひとつどかして中へ入っていきました。そこは暗くて細くて、とても小さな穴でしたが、一人ひとり順番に中へ入ることができました。そして最後に入った人は、石を元通りにして見つからないようにしました。 やがて、大勢の追手の軍勢がサイカチ原を取り囲みました。そして、そこらじゅうを探し回りましたが、どうしても門徒衆たちを見つけることができませんでした。木の根元まで探しても、川原一面トゲだらけのサイカチでどうにもなりません。 そのうちに小さな穴のようなものを見つけ、のぞいて見ましたが穴の中はまっ暗で、その上にクモの巣がびっしり張られていました。 「ひゃあ、これはたまらん。汚い」 「クモの巣が、こんなに張っているのだから、八尾の門徒衆がいるわけはないわな」 クモの巣だらけになった家来は、頷き合いながら引き上げて行ってしまいました。 一匹のクモのおかげで、危うく九死に一生を得たという話でした。 今も庄川のほとりには、大きく枝を張ったサイカチの大木が並んでいます。 ―おしまい―
このお話は、庄川地域のボランティアグループが制作した紙芝居より、一部加筆・修正の上、掲載しました。
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「ひゃあー、これはたまらん。きたない」
「ひゃあー、これはたまらん。きたない」
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