第83回 山田野の天狗さん(2/2話)
「どうしてあんなとこ上ったが」 みんな口々に聞きましたが、清まはぼんやり立ったままです。ひとまず寝かせようと布団を敷き、清ま連れていこうとすると、清まが言いました。 「あこに立派な着物姿の御坊(ごぼう)様が何人もおいでて、『また来んなんあかん』言うとった。行かんなん」 清まが、手を振りほどいて木のそばへ行こうとする様子を見ていた村の年寄りが言いました。 「何かにとりつかれるとるがかもわからん。蚊帳(かや)吊ってその中へ清まを入れっしゃい。それから数珠(じゅず)持ってきて、蚊帳の下の方その数珠で押さえるがいぞ」 村人たちは、言われた通りにして口々に念仏を唱えました。 どれだけ時間が経ったでしょう。上から低い声が聞こえてきました。 「高い所へ行く術(すべ)を教えてやったのに、これでは連れて行くことができん。仕方ない、他を探そう」 そして、何かが飛び立つような音がしました。村人たちが慌てて外へ飛び出してみると、黒い大きな影が二つ、屋根から柚の木へ飛び移っていきます。 「うわあ、天狗じゃ」 村人たちはびっくりし、柚の木の下で腰を抜かしてぽかんと見上げておりました。天狗は山田野の林の中へ消えて行きました。 その後、清まは真面目に仕事に励み、鍛冶屋の親方になったそうです。 ―おしまい―
●このお話は、福光地域公立保育園が制作した紙芝居より、一部加筆・修正の上、掲載しました。
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清まを蚊帳の中に入れ、口々に念仏を唱えました。
清まを蚊帳の中に入れ、口々に念仏を唱えました。
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