第85回 子撫川のいわれ(1/2話)
昔、小矢部市を流れる子撫川の上流に、一軒の家がありました。その家にはとても気立ての良い娘が住んでいました。 そこへ加賀・能登へ旅立とうとする、若くて男前の一人の修行僧が立ち寄り、こう言いました。 「すみませんが、お茶を一服いただけませんでしょうか」 出てきた若い娘は頬を赤く染めながら、「はい、ただいま」と言ってお茶を持ってきました。 その修行僧はお茶を一口飲むと、「有難う」と言って去っていきました。 ところがこの娘は、この修行僧にすっかり心を奪われてしまい、僧の残したお茶をこっそりと飲んでしまいました。すると、あら不思議、娘は身ごもりました。わけを知らない親たちは心配で心配でたまりませんでした。 「その子の父親は誰ながけ。私たちに教えておくれ。決して悪いようにしないから」 両親は何度も問い質しましたが、娘は決して答えようとはしませんでした。 その後、娘は無事に玉のような子を産みました。親たちは子どもができてしまった以上、今さら何を言っても仕方がないと思い、みんなで大事に育てました。娘は父親である旅の修行僧が、再びここを通るのをじっと待っていました。
−つづく−
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「その子の父親が誰か、教えておくれ」
「その子の父親が誰か、教えておくれ」
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