第86回 婆々坂と大蛇(1/2話)
南砺市広瀬地区の山本の奥に、木が沢山生えている蛇目山(じゃもくざん)という山があります。この山には、不思議な言い伝えのある婆々坂という険しい坂道があります。 昔、蛇目山には、大小四十八もの沼があり、両腕を広げてもつかめないほどの大蛇が棲んでいました。しかし、いつも沼の底深くに隠れていて、なかなか姿を見せませんでした。この近くの村では、大蛇の話でもちきりでした。 「大蛇を見たら大金持ちになれるそうな」 「病気もせんと、長生きできるがやと」 「大蛇を見た人に、頭の良い親孝行な子が生まれたそうな。なんとか見たいものだ」 村人たちは沼の辺りへ薪を拾いに出かけては、一目大蛇を見たいと願っていました。 ある年のこと。一年間、毎日大雨が降り続き、米や野菜が全然採れなかったことがありました。その上、沼の水があふれ出し、七月頃にはついに一つの山が押し流されてしまいました。村人は食べるものや着物、住む家まで流され、困り果てていました。 「家が壊れて住む所もない。これからどうすりゃいいがじゃ。これじゃみんな死んでしまうぞ」 次の年、どこからか九十歳くらいの白髪のおばあさんが現われ、昼も夜もお経を唱えながら、村人たちに草の根や木の皮の採り方や食べ方を教えて歩きました。 「おばば様がおいでてから、村の人が死なずに済むようになった。もったいないこっちゃ」 「ほんまに生き仏様じゃ。有難い」 村人はこの不思議なおばあさんを大切にしました。 −つづく−
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「ほんまに生き仏様じゃ。有難い」
「ほんまに生き仏様じゃ。有難い」
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