第86回 婆々坂と大蛇(2/2話)
お盆の日、一人の村人は木の根を採りに出かけました。沢山採って、喜んで帰ろうとした時、ふと沼の方を見ると、大蛇が沼の底から這い上ってきました。鱗は五色に輝き、目と鼻をむき出して、村人を『ギョロリ』と睨みつけました。 村人がびっくりして目をつぶると、一瞬の間に大蛇の姿は消え失せ、近くの草が押し倒されていました。 その時、山の上から「南無阿弥陀仏・・・」と声高らかなお経が聞こえたかと思うと、おばあさんがものすごい勢いで坂を駆け下りてきました。そして、何かにつまずいて道端の笹原へ転がり込み、うつ伏せになったまま起き上がってきません。おばあさんの手や足、首筋は蛇の鱗で包まれていました。 村人がおそるおそるおばあさんに近付いてみると、体から御光(ごこう)がさしているではありませんか。 「おばあさんは大蛇様だったのか」 手を合わせて一心にお経を唱えると、おばあさんはみるみるうちに黒石に変わってしまいました。 「どうかこれからも村のみんなを見守ってください」 今でもその黒石は不思議な石として残っており、お盆の夜には御光がさすと言われています。それからこの坂を「婆々坂」というようになりました。 ―おしまい―
このお話は、福光地域公立保育園が制作した紙芝居より、一部加筆・修正の上、掲載しました。
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おばあさんはみるみるうちに黒石に変わってしまいました。
おばあさんはみるみるうちに黒石に変わってしまいました。
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