第88回 まいこん淵に流れ着かれた御神体(1/2話)
その昔、小矢部川は庄川と合流していました。そのため小矢部川の川下あたりは、大水のたびに水浸しになっていました。なかでも小矢部市荒川地区の石王丸あたりは、坂又川や中川も小矢部川に流れ込んでいました。大雨になると池や沼ができ、川の合流する所は青くよどんだ淵になっていました。その淵を地元の人は、まいこん淵と呼んでいました。 ある晩のこと。この村の村長さんは朝から降っている雨が一向に止まないので、なかなか寝付かれないまま朝方近くになってしまいました。その時、あたりが急に明るくなり、どこからともなく厳かな声が響きました。 「私は水の神様である。今、まいこん淵に流れ着いた。水をたくさん飲んで溺れそうじゃ。早く助けに来てくだされ」 村長さんはビックリして跳ね起きました。そして隣に寝ていた奥さんを起こして言いました。 「今、神様の声を聞いた。まいこん淵に流れ着いたと言っておられる。ちょっと見に行ってくる」 「こんなひどい雨ん中、行くがけ」 「今なけんなんあかん。神様、溺れてしもわっしゃる。はよう、行かんなん」 「そんなら、気、付けて行かっしゃいね」 奥さんは村長にばんどりを渡して送り出しました。 外は大雨で道がどこか分からないほどになっていました。やっとのことでまいこん淵にたどり着くと、何か大きな物が引っかかっていました。 −つづく−
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「早く助けに来てくだされ」
「早く助けに来てくだされ」
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