第10回 きつねの嫁入り(前篇)
藪波(やぶなみ)地区と東蟹谷地区の境を流れる渋江(しぶえ)川に、砂馳(すなはせ)川が流れ込んでいる所があります。 昔はこの辺りの土手に、すすきやくずがたくさん生えていました。天気の良い日には、時々山から土手づたいに狸や狐が下りて来て遊んでいました。 そんなある秋の日のこと、村人が野良仕事の手を休め、辺りの景色を眺めました。ふと川の上手を見上げると二人連れの女の人が足早に歩いていました。 一人は背中に大きな荷物を担ぎ、両手には風呂敷包みをぶら下げた年老いた女の人でした。 もう一人は小さな包みを大事そうに抱きかかえ、うつむき加減に歩いている娘でした。 村人は、「このあたりでは見かけぬ顔じゃが、どこへ行くがやろ」と思い、しばらく眺めていると二人は橋のたもとで立ち止まりました。 すると急に空が曇り、黒い雲が二人を包み込みました。年老いた女の人は娘を先にして急いで橋を渡って行きました。 その途端(※1)、辺りは真っ暗になり、大粒の雨が降ってきました。村人は慌てて近くの小屋に駆け込みました。
−つづく−
※1途端・・・ちょうどその時
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イラスト 作・ひまわりグループ
イラスト 作・ひまわりグループ
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