第89回 立野脇の女石と男石(2/2話)
村人は小矢部川の水で体をきれいに洗い、裃(かみしも)を着て女の形をした石を見つけに川へ入りました。 「おお、この石が女石に違いない。みんなで力を合わせて運んで行こう」 村人たちは、村まで女石を運び、その女石に毎日お参りしました。すると次々と女の子が生まれたのです。 村人たちは「めでたいことじゃ」と喜びました。 ある日の夕方、おじいさんがお宮さんの近くで畑をしていると、どこからか女の悲しそうな泣き声が聞こえてきました。声のする方へ行ってみると、なんと女の石神様が泣いておられるのです。 「暗いお宮さんに私一人でいるのは寂しいのです。男の神様も連れてきて欲しいのです」 「こりゃかわいそうなことをした。男の神様がいなくて寂しいのは当たり前じゃ」 次の日、早速村人たちは小矢部川へ行って、男の神様の石を探しました。すると女の神様の石があったすぐ近くに、男の形をした男石があったのです。 「これじゃ。この石を連れて行こう。きっと女の石神様も喜ばれることじゃろう」 村人たちは男石を運び、女の石神様の隣に並べて置きました。そして真ん中に、「仲人」と言う石神様も置きました。すると、泣き声はぴたりと消えてしまいました。 それからというもの、この村には沢山の子どもが生まれ、とても幸せな村になりました。 今でも、子どもの欲しい人がこのお宮さんにお参りに来られるそうです。 ―おしまい―
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「みんなで力を合わせて運んで行こう」
「みんなで力を合わせて運んで行こう」
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