第90回 天狗と与左衛門(2/2話)
すると大男はからから笑って、 「こりゃ与左衛門、お前は『天狗にも負けん』とほらをふいて歩いとると言うがなら、おらと相撲を取ってここを通らっしゃい」 と言いました。 与左衛門は道具をさらいおろして(※5)、大男と相撲を取りました。しかし与左衛門がどんなに力を入れてもどうにもならず、とうとうその場に倒れ、気を失ってしまいました。そのうち寒くなって気が付くと、大男はどこにもいませんでした。 与左衛門はやっとの思いで家に着くと、ご飯も食べずに寝てしまいました。家の人が心配して「どうしたがや」と聞くと、与左衛門はようやく大男について話し始めました。 そして話を聞いた家の人が、村の衆と一緒にお宮さんに行ってみると、しめ縄の張られた大きい杉の木の下が、与左衛門の足跡でぐちゃぐちゃになっていました。 「こりゃ与左衛門、大杉と相撲取ったがや。天狗さんが大男に化けて懲らしめたんじゃ」 それからというもの、村の衆は「自慢するとひどい目に遭うから、気をつけんまいけ」と、戒めあったということです。 −おしまい−
※5さらいおろす・持ち物をむぞうさにおろす
このお話は、小矢部市郷土愛護セミナー「ひまわりグループ」が手掛けた『ふるさとの民話〜小矢部〜』より、一部加筆・修正の上、掲載しました。
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「大杉と相撲を取ったがや」
「大杉と相撲を取ったがや」
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