第91回 温泉のおこり(2/2話)
ある時、一人では、どうしても歩けない重い病気の人が駕籠に乗せられてやってきました。十七日間、お湯に入りながら仏様に手を合わせ続けると、どんどん力がついてきて、一人で歩いて家へ帰ることができるようになりました。 その噂を聞いた福光の城の「石黒」という殿様もこのお湯に入りに来られました。 「これは良いお湯じゃ。疲れがとれるわい。怪我をしたり、疲れた家来たちもぜひこのお湯に入れてやろう」 このお湯の話は、遠くの町や村まで伝わり、人が次から次へとやって来て、静かだった村はとても賑やかになりました。 ところが何年も経つと、お湯の取り合いでけんかをしたり、田んぼや畑の仕事の邪魔をしたり、野菜を盗ったりする心の良くない人たちが、あちこちから集まるようになりました。 その様子を、一人のお坊さんが山の上からじっと見ていました。 「困ったものじゃ。こんなにけんかばかりしているようじゃ、村が大変なことになってしまう」 そう言いながら、力なく山から下りて行かれました。 しばらくすると、今までこんこんと出ていたお湯がだんだんと減り、とうとう出なくなってしまいました。(※) 村の人たちは温泉の周りに集まって、なくなったお湯を眺めて溜息をつくばかりでした。 ―おしまい― ※現在は鉱泉が湧き出し、「湯谷温泉栄楽荘」が営業中です。
このお話は、福光地域公立保育園が制作した紙芝居より、一部加筆・修正の上、掲載しました。
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「こら、これはわしの湯じゃ」
「こら、これはわしの湯じゃ」
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