第93回 天池の不思議(1/2話)
小矢部市藤森地区の南方の深い山続き、杉谷内と小森谷に面している尾根の上に、周りが百メートルくらいの「天池」という池があります。この天池にはいくつかの伝説があります。 むかし、えらいお坊様がこの地に来られました。 そして、「おー、なんて空気の澄んだ所だ。ここにお寺を建てて、心静かに仏様をお守りしましょう」と話されました。 「この地にお寺を建ててくださるとは、有難いことじゃ」 「わしらも仏様といっしょに暮らせるなんて、もったいない、もったいない」 村人たちは大変喜びました。 「地面をならさんなんな(※1)。寺を建てる材木も集めんなん」 村人たちは一生懸命、汗を流して働きました。やがて、材木も大方集まりました。 「これだけ集めたら、いつでも建てられるなぁー」 村人たちは、思い思いのお寺の姿を心に描きました。ところが女の人が一人紛れていたことから、山の神様の怒りに触れてしまいました。当時女の人は、山に入ることを固く禁じられていたからです。 あろうことか、集めてあった材木が一晩のうちにすべて地中深く埋もれてしまい、いつのまにか満々と水を湛えた池になってしまったのです。 「これは、どうしたことじゃ」 「せっかく集めた材木が水の泡じゃ。お寺が建つのを楽しみにしていたのになぁー」 お坊様はもちろんのこと、村人たちもそれはそれは嘆き悲しみました。 それ以来、山の神様はこの池に女の人が近寄ると雷鳴を轟かせ、大雨風を巻き起こし、果ては洪水をもたらし田畑に被害を与えるとのことで、村人たちは恐れおののき、この池に近寄らなくなりました。 −つづく−
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材木がすべて地中深く埋もれてしまい・・・
材木がすべて地中深く埋もれてしまい・・・
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