第96回 弘法さまの清水(2/2話)
「大変待たせたね。さあ、お飲みくだされ」 「これはこれは、もったいない。有難いことだ」 お坊様は手を合わせて、水をぐっと飲み干しました。 「あー、おいしい。生き返りました。おばあさん有難う」 お坊様はそう言って、深々と頭を下げられました。 「ところでこの水はどこから汲んで来なさった」 「はい、この里には飲み水がなく、向こうの山の谷間から汲んできました」 「それはそれは、ご苦労様でした。お礼に私が水の湧く場所を探してあげましょう」 お坊様がそう言うと、おばあさんはびっくりして尋ねました。 「あなた様は、もしかしてとてもとても偉いお坊様ではありませんか」 「いえいえ、私はただの通りすがりの坊主でございます」 そしてお坊様は外に出て行き、持っておられた杖であちこち突いてまわられました。 そして現在の浄教寺前のあたりを突つかれた時、冷たくてきれいな清水が湧き出てきました。 それからというもの、この里はお坊様のおかげで飲み水に不自由しなくなったということです。
このお坊様は、後に弘法大師といわれた、偉いお坊様だったそうです。 ―おしまい―
●このお話は、小矢部市郷土愛護セミナー「ひまわりグループ」が手掛けた『ふるさとの民話〜小矢部〜』より、一部加筆・修正の上、掲載しました。
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冷たくてきれいな清水が湧き出てきました。
冷たくてきれいな清水が湧き出てきました。
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