第98回 太田の金比羅さん(1/2話)
太田の金比羅さんは、水の神様として四国から招かれました。その神様を迎えに行く時、二人が乗った船が途中で動かなくなってしまいました。 船頭さんはこう言いました。 「多分、海の神様の怒りに触れて動かなくなったのでしょう。誰か一人をその神様に差し上げれば、怒りも鎮まるでしょう。誰か海に入ってもらいたいのだが・・・」 そして太田から行ったうちの一人がその役になってしまいました。しばらく困っていましたが、やがて、 「わかりました。それなら私が海に入りましょう。でも死ぬ前に、ひとつお経を上げさせてください」 そう言ってお経を唱え始めました。そのお経は延々数時間も掛かって、ようやくお経を読み終わった頃に、なんと船が動き始めました。彼は満ち潮と引き潮の境目で船が動かなくことを知っていて、お経を上げて時間を稼いだのです。
さて、金比羅さんには二本の旗があります。一本は「伊勢旗」と言い、伊勢の大神宮の旗、もう一本は讃岐(今の香川県)の金比羅さんの旗です。この二本の旗の絵は、安藤広重の作という言い伝えがありますが、広重の名前が入っていないので本当かどうかはっきりしません。でも広重ではないとしても、広重の門下生が描いたものかもしれません。 −つづく−
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現在の金比羅社
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