第98回 太田の金比羅さん(2/2話)
それから時を経た、昭和九(一九三四)年のことです。 七月十一日、前の晩から庄川上流に降り続いた雨が、谷川にどっとあふれました。それが庄川本流に集まってついに大氾濫を起こし、あっという間に太田橋が流されてしまいました。ところが崩れ落ちた橋の杭の真ん中に、川木拾いの男四人が掴まって助けを呼んでいるではありませんか。四人は残った橋の杭によじ登って必死に助けを呼んでいますが、この大洪水では誰も助けに行けません。男たちは、そのうち力尽きて庄川の波に呑まれて消えてゆく運命でした。 その時です。「庄川の男ここにあり」と、白鉢巻をした三人の勇士が川上から船を漕ぎ出しました。勇士は井上太次、小竹政次郎、小竹一郎という太田の若者です。庄川の水の量は依然として衰えることはありませんでしたが、三人は見事な竿さばきで橋の杭に近づきました。しかしもう少しで助けられるというところで船は流されてしまい、三人は命からがら川下の岸に辿り着きました。 そこで今度は、船頭が四人、さっきと同じように白鉢巻をして川上から救助に向かいました。その勇気ある男たちもやはり太田の若者でした。その男たちの名は、田島庄三、平木太次、安念利正、平木喜太でした。少しずつ少しずつ橋の杭に近づき、時間をかけてついに四人の男たちを無事救助することができました。 その後、太田の人たちは、この七人の勇者の立派な勇気を讃え、金毘羅社に「七士顕彰の碑」を建てました。そしてこれからも末永く、その勇敢な心を引き継ごうとしています。 ―おしまい―
このお話は、砺波市立庄南小学校が制作した「庄南むかしばなし」より一部加筆・修正の上、転載しました。
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現在の金比羅社
現在の金比羅社
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