第11回 子撫川のいわれ(前篇)
昔、子撫(こなで)川の上流に一軒の家がありました。その家にはたいへん気立ての良い(※1 )娘が住んでいました。 そこへ加賀・能登へ旅立とうとする若くて男前の一人の修行僧(※2 )が「すみませんが、お茶を一服いただけませんでしょうか」と立ち寄りました。 出てきた若い娘は、ほほを赤く染めながら「はい、ただいま」と言ってお茶を持ってきました。その修行僧は、お茶を一口飲むと「ありがとう」と言って去っていきました。 ところがこの娘は、この修行僧にすっかり心を奪われてしまい、僧の残したお茶をこっそりと飲んでしまいました。すると、あら不思議、娘は身ごもった(※3 )のでした。訳の知らない親たちは心配で心配でたまりませんでした。「その子の父親はだれながけ。私たちに教えておくれ。決して悪いようにしないから」と、何べんも問いただしましたが、娘は決して答えようとはしませんでした。
−つづく−
※1気立ての良い・・・性質のやさしい ※2修行僧・・・学問・技芸をみがくため、諸国をめぐる坊さん ※3身ごもった・・・おなかに赤ちゃんができた
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イラスト 作・ひまわりグループ
イラスト 作・ひまわりグループ
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