第100回 石坂のかんのんさま(2/2話)
ある年のこと、一晩中強い風が吹き、嵐になりました。ようやく嵐が静まって、孫六が外に出てみると…。 「大変だ、蔵の屋根がないぞ。あの石はどこだ」 「あれがなくなると災難が起きる。探さなくては」 孫六や近所の人たちがあちこちと探しましたが、桐の箱の中にあった石は見つかりませんでした。それから何日も経ち、孫六は石のことをすっかり忘れていました。 ある日、孫六と村の人がお堂の前を通り掛かると、いつのまにか観音堂の中にあの丸っこい石が入っていました。みんな手を合わせて拝みました。 「どうしてこんな所に。いつの間に、誰が持ってきたんだろう」 それから時は流れ、大事な観音様の石は、観音堂からしばらく孫六の子孫の家に移さ れることになりました。 ある晩のこと、家の主人の夢に観音様が現れて、こう言いました。 「今まで大事してくれて有難う。観音堂に戻りたい」 驚いた主人は急いで観音様を元の場所に安置しました。 それから石坂の人たちはこの観音様のことを『火難(かなん)観音様』と呼んで、今も大切にしています。毎年八月十七日には、観音堂の前に集まってお参りし、高宮の比賣(ひめの)神社の神主さんにお祈りしてもらうことにしています。おかげで昔から石坂では、一度も火事が起こらないということです。 ―おしまい―
●このお話は、福光地域公立保育園が制作した紙芝居より、一部加筆・修正の上、掲載しました。
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「観音堂に戻りたい・・・」
「観音堂に戻りたい・・・」
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