第101回 木鐘で鳴らん(2/2話)
「こりゃ、しもたわい。でっかい釣鐘を買わにゃ、おらは村へ帰れん」 太郎平は町中を探し回り、やっと釣鐘屋を見つけました。 「おら、これだけの銭を持っとんがやけど、でっかい釣鐘買えるけ」 「そんなちょこっしでは売れんね」 「そんなら、あの店の前にぶら下がっとる釣鐘を売ってくれっしゃい」 「ああ、あれなら売ってもいいぞ。でもあの鐘は店の看板に作ったもんで、木でできとるさかい、叩いても鳴らんぞ」 太郎平は仕方なく、木でできた釣鐘を買って村へ戻りました。門徒衆は、釣鐘を見て大喜びしました。 そして、ほんこさんの日がやってきました。撞き初めなので、村一番の美人が撞くことになりました。赤いタスキに鉢巻をきりっと締めて、釣鐘堂に上がって行きました。門徒衆はどんな良い音が鳴るのかと、胸をドキドキさせていました。 ところが、釣鐘は木でできているので、今にも壊れそうな音が出ました。若い衆が代 わる代わる撞いても同じだったので、太郎平を呼びに行きました。 太郎平は、みんなに合わせる顔がなくて、布団をかぶって寝ていました。そして小さ な声でこう言いました。 「木でできとる鐘やさかい鳴らん。木鐘で鳴らん」 それ以来、このあたりでは「申し訳ない」ということを、「気がねでならん」と言うようになったそうです。 −おしまい−
●このお話は、小矢部市郷土愛護セミナー「ひまわりグループ」が手掛けた『ふるさとの民話〜小矢部〜』より、一部加筆・修正の上、掲載しました。
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「木鐘で鳴らん、気がねでならん・・・」
「木鐘で鳴らん、気がねでならん・・・」
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