第102回 祖父川と紋兵衛山(1/2話)
砺波市の大門(おおかど)に伝わるおはなしです。 むかしむかし、庄川の金剛寺(こんごうじ)から西に向かって大門あたりまで、祖父川という川が流れていました。庄川の流れが、現在の千保川が流れる位置に変わった頃に水源が断たれてしまったため、祖父川は今の油田あたりから高岡市早川あたりで小矢部川へ合流する部分のみとなっています。 そんな祖父川は雨が降るたびに洪水が起きるので、村の人たちは大変困っていました。そこに住んでいた代官は、たいそう心配して大きな水門を作りました。 それからというもの、大水となっても水門を使って他へ水をやるので、洪水の被害はなくなりました。大門という地名は、「大きな水門」という意味で付けられました。
さて今から三百年ほど前、中野に藤井七郎兵衛という大変勇ましい男が住んでいました。 七郎兵衛が戸出へ出掛けた時のことです。祖父川沿いの道は、戸出方面から井波の太子伝会に参拝する人々が列をなして通ったことから、「井波の太子伝道」と呼ばれていました。彼がその道を通って戸出から帰る途中、大門の祖父川神社のうっそうとした薄暗い土手にさしかかりました。すると、道の傍らに何か動いているものがおり、よくよく見ると狼が三匹座っていました。その中の一番大きな狼が、七郎兵衛の姿を見ると、道の真ん中に出てきて座り、「通れるものなら通ってみろ」と言わんばかりにこちらの方をじっと睨みました。七郎兵衛は狼に近付き、足の先で力いっぱい狼の顎を蹴飛ばしました。その痛さと驚きで、狼は声を出して逃げました。その後を追って、残りの二匹もすっとんで逃げていってしまいました。 −つづく−
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現在の祖父川神社
現在の祖父川神社
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