第11回 子撫川のいわれ(後篇)
その後、娘は無事に玉のような子を産みました。親たちは子どもができてしまった以上、今さら何を言ってもしかたがないのでみんなで大事に育てました。そして父親であるたびの修行僧が、再びここを通るのをじっと待っていました。 子どもが三才になったある日、あの時の修行僧が再び娘の家を訪れてきました。 「失礼ですが、あなた様は三年前、ここでお茶を一服飲まれませんでしたか」と娘が聞くと、「ハイそうですが、なんでしょうか」と僧が答えました。娘は一目、その僧に子どもを見せようと子どもを連れてきました。修行僧は「もしかしてその子は私の子どもではありませんか」と言うなり、子どもを抱きかかえました。そしてやさしく、頭の先からつま先まで撫で回しました。 すると不思議なことに、子どもはまるで泡が消えるかのように娘の涙と共に家の前の川に流れ出し、たちまち姿を消してしまいました。 このような話が広がり、それから誰が言うともなく、この川を「子を撫でる川」と書いて、『子撫川』と呼ぶようになりました。
―おしまい―
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イラスト 作・ひまわりグループ
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