第104回.大杉と天狗(1/2話)
小矢部市の薮波地区に伝わるお話です。 むかしむかし、ある村に何代も続いたという、それはそれは古い家がありました。この家には大きな杉の木が何本もあって、昼間でも暗かったことから、村人たちは「天狗様が住んでいらっしゃる木ではないか」と恐れていました。 「夜遅ーなったら、天狗様に連れて行かれるぞ」 「悪いことをしたら、天狗様が連れにござらっしゃるぞ」 村人たちは、子どもたちを叱る時の戒めにしていました。 ある日、不思議なことが起きました。その古い家のすぐ後ろに、五歳の男の子と八歳の女の子がいる家がありました。二人は仲がよく、いつも一緒に遊んでいました。夕方になり、遊び疲れた二人は家に帰って来ましたが、お父さんもお母さんも田んぼから帰ってきません。二人はお腹がすいたので、何か食べる物がないかと戸棚を探しました。 「あ、ここに餅がある。腹へったから、これを食べようよ」 「あ、甘酒もあるよ。これも飲んでみようか」 二人は餅を全部食べてしまいました。そしていつの間にか寝てしまいました。 あたりが暗くなり、田んぼから帰って来たお父さんとお母さんが、家で二人の名前を呼びましたが、返事はありません。灯りをつけてみたところ、女の子だけしかしませんでした。 「あれ、ぼん(※1)おらんぜ。どうしたがや」 −つづく−
※1ぼん・・・男の子
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二人は仲がよく、いつも一緒に遊んでいました。
二人は仲がよく、いつも一緒に遊んでいました。
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