第○回 ねつおくりまつり (1/3話)
「ねつおくるばーい、ねつおくるばーい、ねつおくるばーい!!ねつおくるばーい。」 これは毎年暑い夏の“ねつおくり”の日に田んぼのねつ払いをしている子どもたちの声です。この頃、町では七夕祭りや夜店もあって、賑やかな祭りの日となっています。どうしてこんなねつおくり祭りが始まったのでしょうか。 今から三百年ほど前(元禄元年の頃)のことです。 「この村は、でかいと米がとれてよ良いところじゃ」「今年も良い米ができたらいいのー」「良い米作って、加賀の殿様にも食べていただかんなん」 お百姓さんたちは、一生懸命田んぼを耕して、稲の苗を植えたのです。 ところがある日のこと、たいへんなことがおこったのです。 「おらの田んぼをみてくれ!稲があかーくなってか枯れてきたがじゃ。稲の葉っぱをみてくれっしゃい。赤い穴があいとるがじゃー」 村人があわててみんなに知らせに来たのです。 「おらのうちの田んぼもじゃ」「おらもじゃ」「おらのうちもじゃ、まるでおらの田んぼは火をつけて焼いたような色をしとる」「よわったな、こりゃ虫が稲を食べていってしもたがかな?」「このまんまにしておきゃ、米がとれんようになるぞ」「ご飯が食べれんようになってしもうわい」「よわった、よわった、ほんまによわった」「村長様、村じゅうの田んぼが枯れていくがです」「助けて下され、どうすりゃ良いですかいね」「そりゃ困ったことになったな、きっと稲の病気(※1)にかかったがじゃろ」
―つづく―
※1稲の病気・・・イモチ病・稲熱病のこと。
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「まるでおらの田んぼは火をつけて焼いたような色をしとる。困ったのぉ」
「まるでおらの田んぼは火をつけて焼いたような色をしとる。困ったのぉ」
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