第15回 金塚の宮(1/2話)
これは、旧福野町南野尻(※1)に古くから言い伝えられた、金塚の宮というお話です。 昔、村はずれにおじいさんとおばあさんが住んでいました。二人はお金持ちではありませんでしたが、正直者で、少しばかりの田畑に、日夜汗を流す毎日でした。 ある晩おじいさんは、とても不思議な夢を見ました。 夢の中で髪もひげも真っ白な老人が現れ、「私は東の宮のケヤキの木の根元に埋められた黄金の霊である。日頃そなたの正直な生き方に深く思うところがあり、この黄金をそなたに贈ろうと思う。しかしこれはそなた一人の縁につながるものであるから、たとえ連れ合い(※2)にすら話すことはならぬ。人の目に触れぬように、心して掘りおこすように伝える。もし他人の目に触れた場合は、黄金はたちどころに消えて無くなるであろう」 と告げて消え、夢は覚めました。 「変わった夢を見たものだ…」、とは思ったものの、夢は夢。本当とはなかなか思われず、そのままにしておいたところ、次の晩もまた同じ夢を見たのです。全く同じ内容の夢を続けて見るとは、もしかするとこれは正夢かもしれない。 不思議な夢の話を、おばあさんに話したい気持ちをこらえて、そっと床を抜け出したおじいさんは、東の宮へと急ぎました。 一方おばあさんは、隣の寝床の気配に目覚め、まだ起きるのには少し早いのにそっと起きて、外へ出て行くおじいさんを不思議に思い、後をつけて行きました。 おばあさんに後をつけられているとも知らずに、おじいさんは白々と明け始めた朝もやの中を、東の宮へと急ぎます。肩には鍬を担ぎ、そして夢のお告げのケヤキの木にたどり着きました。 −つづく−
※1南野尻・・・現在の南砺市苗島付近。 ※2連れ合い・・・配偶者。この場合はおじいさんの妻(おばあさん)のこと。
|
|
/DBIMG/COLUMN/densetsu_41_1.jpg
「人の目に触れぬように…」
「人の目に触れぬように…」
|