第18回 祖母田江(1/2話)
南砺市高儀の南の端に「祖母田江(ばばたえ)」と言い伝えられているところがあります。 昔むかし、この村に大変人のいい働き者のおじいさんとおばあさんが住んでいました。 ある日のこと、おじいさんは乾いた土でやっと育った菜っ葉を、畑でぼんやり見ていました。三匹の青虫が葉を食べていましたが、人のいいおじいさんは腹いっぱい食べさせてやりました。青虫はやがてきれいな蝶になり、どこかへ飛んでいきました。 「おじいさん、水がないさかいに米も野菜も思うようにできん。どうにかならんかね」 「そうだ、何とかせんとあかんな。みんな弱っとるでな」 次の日、おじいさんは夕べの話を思い出しながら、畑をぼんやりながめていました。するとそこへ三匹の蝶が飛んできて、おじいさんのまわりを舞いました。おじいさんは蝶の後をついてくると、高瀬まで来ていました。そこには雄神川(※)が勢いよく流れていたので、おじいさんはこの水を引こうと思いました。 「おじいさん、お蔵の中の米俵、一人でのぞいてごらん。他人がのぞけば空っぽだぁ」、ふと耳元から歌が聞こえてきました。そしていつの間にか蝶はいなくなりました。 その晩、おじいさんがこっそりと蔵へ入ると、古ぼけた米俵が不思議なことに美しい米俵に変わり、中には米がいっぱい入っていました。枡で米を取り出してみると、取り出した分だけまたいっぱいになりました。 次の日、村の人たちを集めて、高瀬から高儀まで用水を作る相談をしました。しかし村の人たちはそんな大きな工事ができないと言いました。でもおじいさんは少しも慌てません。あの不思議な米俵があるからです。 −つづく−
※雄神川・・・現在の庄川のこと
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「お蔵の中の米俵、一人でのぞいてごらん」
「お蔵の中の米俵、一人でのぞいてごらん」
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